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【事例】4Kドラマで大量のスイーツをフォトグラメトリーで3D化

2017年7月から放送されていたテレビ東京【木ドラ25】『さぼリーマン甘太朗』のポストプロダクション作業を担当し、モデリング、フォトグラメトリ、VFX、オフライン編集、オンライン編集、MA作業を行いました。

本作ではテレビ東京以外にも、BS JAPANでの放送やNetflixオリジナルドラマシリーズとしてUHDで世界配信中です。

本作はNetflix納品向けにUHDでのマスターが必要であり、様々な「スイーツ」を実写素材と組み合わせるVFX作業が多く、従来の手作業での3Dモデリングでは品質と作業スピードが到底間に合いませんでした。

本作では人体用のフォトグラメトリーシステムではなく物撮り用のシステムを別途構築しスキャン作業を行いました。
ドラマ本篇の撮影と並行しフォトグラメトリーの撮影を行いました。実際の店舗から様々なスイーツをタクシー便等で直送してもらい迅速に撮影に望みました。時間の変化や衝撃で形状が崩れてしまうモノも多く慎重を要しました。

『さぼリーマン甘太朗』 3Dモデリング・フォトグラメトリー作業内訳
・作業期間 約2ヶ月間
・総スタッフ 5名
・メイン稼働スタッフ 2名
・総作業時間 360時間(うち126時間は計算時間)
・撮影・編集作業時間 234時間
・撮影枚数 14260枚
・VFX用リトポロジーモデル 46種
・8K-16Kテクスチャ(主にDiffuse,Normalマップを作成し使用)

「スイーツの3Dモデル化」の大部分をフォトグラメトリーを活用し、多数の高品質な8K,16Kテクスチャの3Dアセットを比較的短時間で作成することができました。人間の頭部がCGのスイーツに入れ替わる妄想のシーンが多く4Kドラマに耐えられるCGIの品質が必須でした。

このテーマに対し高品質な8K、16Kテクスチャを効率的に作成できるフォトグラメトリーは大変有用でした。
シュールなVFX演出が多くあり、低品質な3Dモデルでは成立できなかったと思います。


フォトグラメトリ処理後のテクスチャ(AdobeRGBカラースペース)はキャリブレーション処理後、色域を「ACEScg」で統一することにより様々なシネカメラの色域に合わせて柔軟に対応することが可能になりました。

特に今作ではアセットのテクスチャの露出とグレーバランス、色域を全話通して統一することによりVFXアーチストが本来の作業に専念できるようなワークフローを構築しました。

本編収録はRED EPIC(色域はDragonColor)。スキャンテクスチャはキャリブレーションを経て一度ACEScgに統一。MAYAのレンダリング時にDragonColorへ色域変換しました。OCIOを使ったカラーマネジメントにより常に正しい色域で3Dモデルを活用可能です。

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<作中に登場したメロンの実写画像>

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<フォトグラメトリーは複雑なテクスチャを持つ被写体に対して特に有効です>

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<300枚の画像から1.4億ポリゴンのポリゴンを生成>

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<従来時間のかかるテクスチャ作業が劇的に高速化された>

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<生成された8Kテクスチャで露出・グレーバランス・ACEScg色域のテストを行う>

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<完成したメロンの3Dテクスチャ>

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<Zbrushによる立体形状のレタッチ処理の後、MAYAでレンダリング。その後シーンリニアワークフローでNUKEでコンポジット>

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<頭のメロンは演者の動きに精密に3Dトラッキングされており、シュールな世界観が実現できました>

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<様々なスイーツを46種類作成。1億ポリゴンから約1万ポリゴンに整えられ最終的にMAYAでレンダリング>

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<軽量かつ高精細でありながらリアルな質感が得られました。カラーマネジメントにより実際の色味を最大限に維持し、実在する各スイーツの世界観を再現>

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<現場で光の情報をパノラマHDR画像で収録し、IBLの手法でRED EPICの素材と違和感なく合成しています>

この記事は「映画テレビ技術」 2017年9月号 向けに寄稿したものを再編集しています。







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