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B2 カラーグレーディングシアター 施設解説

はじめに

2023年2月 レスパスビジョン株式会社は地下2階 "B2スタジオ"をリニューアルし、ポストプロダクション施設として都内最大級の「225インチ」のDCPシアター準拠のグレーディング空間「Color Grading Theater」をOPENいたしました。

運用開始から1年が経過し、数々の映画作品のカラーグレーディングやDCPマスタリングでご利用頂いております。
そこで、改めて弊社カラーグレーディングシアターの設備に関してご紹介させて頂きます。

ポストプロダクション施設としては最大級の225インチ(5000mm x 2700mm)スクリーン
デジタルシネマ規格に準拠するため定期的なキャリブレーションを実施

本記事は、次の文書に基づいています。
・SMPTE EG 432:2010
・DCI Releases DCI Specification, DCSS Version 1.4.4
・GlennKennel著「Color and Mastering for Digital Cinema」(FocalPress 2006年)


室内環境

カラーグレーディングやマスタリング作業を行う上で最も重要なのは

  • 機器が正しく整備・調整されており、正確に画像を表示していること

  • 表示するデバイスや最終的な視聴環境にあわせて最適な室内環境が用意されていること

が重要となります。作業時の室内環境は人間の視覚特性を考慮した上で規格化されており、規格を満たす室内環境は正しく画像を評価するには必要不可欠です。

正確な映写と画像評価を実現するためのこだわり

SMPTE RP 431-2 Reference Projector for DCDM Theatres では、レビュールーム内のスクリーンから反射される環境光レベルは 0.01 ccl/m2 (0.0029 ft L) 未満でなければならないと規定しています。

スクリーンに映り込む迷光は投影画像のコントラストを低下させるため、不要な明るさを可能な限り遮断することは、正確な映写を行う上で重要な役割を果たします。
カラーグレーディングシアターは地下フロアに存在するため、外光の影響を一切受けることは無く、安定的に環境光0.01cd/ ㎡以下の基準を満たすことができました。

より精度を上げるべく、足元の案内灯や非常灯はエディター・クライアント席から視野に入らない、なるべく後方に設置しています。
案内灯の光源はImaging Science Foundation(ISF)から認定を得た、非常に正確なD65/6500K CCT(相関色温度)、高い演色評価数(CRI 99)を誇るバイアスライトを採用しています。

エディターの作業用ディスプレイもプロジェクターの基準に合わせてキャリブレーションを実施し、エディターの明・暗順応状態を妨げないように調整しています。

プロジェクターの設置には、起動時の排熱と遮音が課題となります。
地下にあるため排気管を使って排熱を行う必要があり、スタジオ内に防音機能を施した独立したマシンルームを設置しました。
プロジェクターの排気口と排気ダクトを直接繋ぎ、効率良く排熱を行うことで長時間の作業でもプロジェクターが安定して動作する設置環境を用意しました。

プロジェクター前面の映写窓にはショーウィンドウや博物館でも採用される AGC社製「クリアサイトⅡ」という高透過低反射ガラスを採用しています。
低反射ガラスはガラス両面に特殊なコーティングを施しており、反射を極限まで低減し、空間の光学的ノイズ(反射ノイズ)を抑制しています。
また、プロジェクターの起動音を遮断するため、光がうまく逃げて乱反射が起きないように角度をつけ二重構造で設置しています。
レンズ前面のガラスは垂直に設置するとレンズ側への反射が大きくなり、迷光を抑制する意味でも有利に働いています。


AGC社製「クリアサイトⅡ」https://www.asahiglassplaza.net/products/clearsight2/feature1/


映写システム

デジタルシネマ プロジェクターChristie CP2415-Xeの導入

カラリストに馴染みのあるトーンを求めてキセノンランプ機を採用しました。レーザー光源機という選択肢もありましたが、「計測値では合っているのに何かが違う」「従来のキセノン機でないと普段の感覚で作業ができない」といった作業者*の感覚的なズレが大きいためキセノンランプ機を採用するに至りました。

*カラリスト、オンラインエディターなどの仕上げを担当するスタッフ

ランプ機はレーザー機と比べてランプの劣化による輝度の低下やカラーバランスが崩れ易いため、メンテナンスサイクルが短いといった欠点があります。
弊社では色彩輝度計(コニカミノルタ製 CS-200 )を所有しており、社内スタッフよる定期的なキャリブレーションを実施しすることで常に正確な映写を保証しています。

色彩輝度計(コニカミノルタ製 CS-200 )
正確に『デジタルシネマ規格』に適合させるため、定期的なキャリブレーションを実施


DCPマスタリング時のチェック体制

シネマサーバーは最新のDolby IMS 3000を用意し、安定した映写を行えます。DOREMI DCP2000も併設しており、弊社内ではDCP作成後に現行のシネマサーバーであるIMS 3000と旧型のDOREMI DCP 2000の年代の異なる両機でインジェストを実施。納品前に問題がないことを確認し、劇場への配送後のインジェスト時のトラブルを可能な限り回避できるようチェック体制を設けています。
劇場上映用トレーラー・シネアドのDCP作成時にはWAVES製 WLM Plus Loudness Meterにより音量測定を実施し、上映時の上限音量規制値に抵触しないかの確認を実施しています。

※一般的に劇場用のトレーラー・シネアドはSAWA(The Screen Advertising World Association)やTASA(Trailer Audio Standards Association)といった団体で推奨される音量が定められております。
”デジタルテレビ放送番組におけるラウドネス運用規定(ARIB TR-B32)”のように厳密な規定とされているわけでは有りませんが、事故を回避する上で推奨値に凖じて作成することを推奨します。
音量などは必要に応じて弊社のMAルームにて調整をすることが可能です。
※ 納品先の規定で指定の音量が定められている際に適合させることも可能です。

編集システム

グレーディング作業時はDaVinci Resolve Studio / Filmlight Baselightが選択できます。
MAC Miniも併設しており、Adobe Premiere Pro / DaVinci Resolve Studio / AVID MediaComposerを用いたスクリーンを見ながらのオフライン編集・プレビューにも対応しています。
社内ネットワークにもつながっており、別の編集室から突発的なVFXカットのチェックといった作業にも素早く対応できます。


スクリーン

当スタジオの一番の目的は画のチェックという点から、画像のエイリアシングを避けるため、有孔スクリーンではなくキクチ科学研究所製のフラットパネルスクリーンを採用しています。

ポストプロダクション施設としては最大級の225インチ(5000mm x 2700mm)の劇場サイズのスクリーンでプレビューしながら作業を行うことが出来ます。


おわりに

想定していた映画作品のグレーディングやDCP作成作業以外にも
スクリーンの大きさを活かし、大型の視聴を伴う街頭ビジョン用映像、イベント・博展映像のプレビューといった用途でも活用頂いております。
場所も代々木駅から徒歩2分と大変便利です。

今後も設備の発展に努めてまいりますのでレスパスビジョン Color Grading Theaterをよろしくお願いいたします。


カラーグレーディングシアター設備

座席数:8人(座席追加可能)
プロジェクター(DLP):Christie CP2415-Xe
スクリーン:キクチ科学研究所 キクチパネルスクリーン(225inch / 5000mm × 2700mm)
音声:5.1chサラウンド
グレーディングシステム:Filmlight Baselight v5.3 / DaVinci Resolve Studio18
波形モニター:LEADER Lv5490
ワークステーション:DELL T7920 / Mac Mini
デジタルシネマサーバー:Dolby IMS 3000
DCPオーサリング:Fraunhofer easyDCP / Dolby CineAsset Pro / MTI CORTEX Enterprise
字幕システム:CANVASs SST G1 Pro

written by Makoto Abe


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